マラソンのペースメーカーをご存知でしょうか。
ペースメーカーは、記録を出したいと願う選手を目標まで導いてくれる存在です。記録が求められる大会では、序盤からハイペースを刻む必要があり、ペースメーカーが基準となって後続に続く選手の潜在能力を引き出しています。そのため、記録を狙う上でペースメーカーは重要な存在です。
今回は「マラソンペースメーカーの役割や報酬は?何キロまで走る?」と題して紹介したいと思います。
では早速どうぞ。
日本でのペースメーカーの始まり
日本でペースメーカーの最初の起用が公表されたのは2003年の福岡国際マラソンでした。海外ではそれよりも前に導入されていて、すでに当たり前となっていました。2001年の高橋尚子さんから2004年の渋井陽子さん、2005年の野口みずきさんと直近3回の女子の日本記録更新がすべてベルリンマラソンなのも、ペースメーカーと無関係ではありません。
ベルリンマラソンでは、ペースメーカーやガイドランナー合わせて6人ぐらいの男性に囲まれながら選手が走っていました。選手は1km3分17~18秒のペースについていければ記録更新を狙えるというわけです。風除けにもなりますし、記録を狙うためにペースメーカーが最高の環境をつくり上げました。
ペースメーカーの役割は?
ペースメーカーは、スタート直後の混戦で必要以上にペースが乱れることや、先頭走者がライバル走者を意識して集中力が乱れることで、スタミナを無駄に使ってしまうことを防ぐことがおもな役割です。また、後ろの選手の風よけになる効果もあります。
「PACE」というゼッケンをつけている選手がペースメーカーです。
ペースメーカーは大会主催者と直接契約を結び、「○○kmの距離を○○分で」といった具合に走行ペースを指示されます。あくまでもペースメーカーは選手達と同じコースを走るため、選手とともにレースを完走するか、役割を終えたらレースから離脱するかは契約によって異なります。(実際にペースメーカーが走る距離は、25km〜30km地点までのことが多いようです。)なお、オリンピックや世界選手権ではペースメーカーは使われません。
ペースメーカーに求められるもの
ペースメーカーも、トップの選手を牽引するにはそれ相応の実力を有していなければならず、自身もトップを目指すアスリートであることがほとんどです。
大阪国際女子マラソンでは神野大地さんや川内優輝さんがペースメーカーを務めました。
主催者は大会での記録更新を期待しているので、求められる人物としてまず挙げられるのは安定感です。走りが速いのはもちろんですが、ペースが速くなったり遅くなったりする人だと、後ろを走るランナーが困ってしまうため、1kmごとのペースをきちんと設定どおりに刻めるのかが重要です。
もう1つは性格です。ペースメーカーが落ち着きがない人だと選手も安心してついていけません。心が揺れ動くとスタミナも消耗するので、選手たちが安心感を抱けるペースメーカーが求められます。
特に女子マラソンのペースメーカーには、ランナーへの配慮ができる優しい性格の人が選ばれる傾向にあるようです。
現在はマラソンの種類は大きく2つに分けられる。
- 勝負のマラソン…世界選手権やMGCなどの順位を争う。駆け引きが重要。
- 記録のマラソン…ペースメーカーをつけてタイム更新を目指す
ペースメーカーの報酬は?
大きな国際大会だと1レースで300万円以上の報酬がもらえることがあるそうです。
また実力によって報酬は変動しますので、1レースあたり50万円〜200万円くらいの相場になっていると言われています。
ただ市民マラソンなどではボランティアでペースメーカーを募集していることもあるそうでその場合は報酬は発生しません。
海外ではペースメーカーとしての実績が認められると、1レースで30万ドル以上の報酬を受け取れ、それだけで生計を立てている人もいるそうです。
まとめ
今回は「マラソンペースメーカーの役割や報酬は?何キロまで走る?」と題して紹介しました。
ペースメーカーを起用することで、現在のマラソンは20〜30キロ以降からレースが始まるようなスタイルになっています。そこまでは無理をすることなく、力を温存していけばいいというのが、現在のマラソンの常識です。
かつて中山竹通さんや宗茂さんがスタートから飛び出して勝負をかけたり、それにピタリとついた瀬古利彦さんが逆転したマラソンがありました。当時のレースは選手たちが必死に自分の持ち味を生かそうと、スタートからゴールまで緊張感に包まれていました。そんなレースが今、姿を消していることが少し寂しくもあります。
ペースメーカーがいないオリンピックや世界選手権で、日本選手の皆さんが勝負強さを見せてくれることを望みます。
最後までお読みいただきありがとうございます。