スキージャンプの高梨沙羅選手が昨年の北京オリンピックに続き、スーツの規定違反により失格になってしまったとニュースになっていました。
北京オリンピックで高梨選手が違反になってしまった時は、私も見ていて悔しくてたまりませんでしたし、ご本人の高梨選手はもちろんスタッフのみなさんも規定違反にならないように入念にスーツをチェックして今回の大会に臨んだはずです。
その中でまたスーツの規定違反が起こってしまったということで、スキージャンプの規定を調べて測り方はどのようなものなのか、スーツと身体のどの部分をどのように見ているのか、何が問題なのかを調べてみました。
まだ速報ベースなので詳しい理由はわかりませんが、調査しながら情報が追加され次第、追記して行きたいと思います。
今回は「スキージャンプでスーツ規定違反の失格はなぜ?測り方やどこが問題か調査」と題して緊急でお届けします。
それでは、調査内容をご覧ください。
スキージャンプの測定方法ガイドライン
本記事は、公益財団法人全日本スキー連盟が発行するGuidelines for the Measuring Procedureを参考にしています。
スキージャンプのスーツ規定を調べる中で、2021年6月付けの資料を見ることができました。
最初に問題となった北京オリンピックより前のスーツ規定ですが、北京オリンピックでも特段スーツ規定の変更があったわけではなく、確か厳密になっただけというように記憶しているので、この資料をもとに測り方やスーツ規定をご紹介いたします。
スキージャンプ測定方法の概要
測定に関しては「選手の測定」と「スーツの測定」「その他」の大きく三つに分けられています。
それぞれを私なりの解釈で説明します。
選手の測定
まず選手の身体的特徴が測られます。
その際の格好も規定されており、男性も女性も服はショーツ一枚で裸足として、 スリップタイプのアンダーウエアのみ許可されています。
個人的にはかなり驚愕でしたが、このような格好で測定されるようです。
公益財団法人全日本スキー連盟が発行するGuidelines for the Measuring Procedureより引用
選手に対して測定される要素
- 身長
- 股下の長さ(B,C 参照)
- 腕の長さ(A 参照)
- 首のサイズ
- 足のサイズ
これらの要素を選手は両腕を水平に上げた状態で測られます。
スーツの測定
続いてスーツの測定ですが、スーツのみのシワをしっかり伸ばして単体で測定されると思われます。
また、ガイドラインからスキーのジャンプスーツはシーム(縫い目)も規定されていて、それを基準に測定されています。
前腕の長さ
前腕の長さ(AL、真ん中の絵の腕の部分)は、脇の下のシーム(縫い目)が交差するところから、袖の先端までのシー ムに沿って測定、測定した数値は、腕の実寸を上回ってはならず、かつ最大許容差 4cm を下回ってはならない。
公益財団法人全日本スキー連盟が発行するGuidelines for the Measuring Procedureより引用
前股下の長さ
前股下の長さ(SL、右の絵の足の部分)は、股下のシームが交差するところ(SX)から、スーツの脚部分の先端までのシームに沿って測定、測定した数値は、測定した選手の股下の長さを下回ってはならない。
公益財団法人全日本スキー連盟が発行するGuidelines for the Measuring Procedureより引用
股下
股下は地面から股下まで垂直に測定、選手はジャンプ台でジャンプ前と同じように (ブーツに装着された)ジャンプスーツおよびブーツを着用しなければならない。測定時は足を40cm離し、脚は完全に伸ばさなければならない。測定した股下サイズは選手のボディーで測定した股下サイズと一致しければならない。
股下の長さと適合のコントロールは同時に実施されなければならない。
この説明は写真もなくイマイチ意味がわからないのですが、股下の測定からは選手もジャンプスーツを着用するものと思われます。
足を40cm離して伸ばすということは、少し腰の位置を下げて測定するのでしょうか?
よくわかりません。
クロッチのシームクロス部分
クロッチのシームクロス部分(Sx)がスーツの最下部でなければならない。このクロス部分は スーツの真ん中で(フロントからバック)最大許容差 2cm とする。
これは普通にジャンプスーツを着たら、Sxが最下部になると思うのですが解釈が間違っているのでしょうか。
非伸縮性ベルトの縫い付け
スーツ内側腰骨真上にジッパーからジッパーまで腰回り水平に非伸縮性ベルトを縫い付け なければならない。同ベルトの幅は 2~4cm、厚さ最大 2mm でなければならない。
ベルト周りのスーツ寸法は、ベルト自体を含め、ベルトの下側のシームの上下 5cm とし、スーツを伸ばした時でも、ボディー寸法を超えてはならない。スーツの身体にフィットする部分 (ベルトの上下 5cm)からスーツサイズの許容値までの移行は、デコボコの無い緩やかものでなければならない。
要は腰骨の上あたりにベルトがないとダメということですかね。
競技用品のコントロール
ひととおり選手とスーツの測定に関する規定が述べられた後に、「競技用品のコントロール」として非常に重要そうなことが書かれています。
選手のボディーのあらゆるポイントを測定可能とし、かつ、スーツ上で同じ部分を測定・比較することができる。選手がスーツを着用し測定する際、選手は両腕を伸ばしヒジをボディーから30cm離す。脚も伸ばし40cm離す。選手は直立姿勢で立たなければならない。
ジャンプスーツはすべての箇所で選手のボディーにぴったり合うもののでなければならない。
直立姿勢でスーツ寸法はボディー寸法と一致しなければならず、最大許容差はスーツのあら ゆる部分においてボディーに対し 最低1cm、最大3cm(女子スーツは最低2cm、最大4cm) とする。ただし、ブーツ周辺部分は例外とする:ジャンプスーツは、ブーツ周辺寸法より最大10cm大きくすることができ(ヒザより下)、ブーツを覆わなければならない。
おそらく高梨選手らスーツ規定違反で失格になった選手はこの記載により問題として判定されたものと思われます。
そもそも日々変化する人間の身体で、スキーのジャンプスーツとの差があらゆる部分において2cmから4cmで抑えることができるのかという問題ですね。
ましてスキージャンプのスーツはシーム(縫い目)まで決まっているようなので、権限のある人が違反にしようと思えば規定違反にできてしまうのではないでしょうか。
今回高梨沙羅選手はウェストで規定違反になってしまったようですが、ウェストの場合、両側に生地を手繰り寄せて無理やりな測り方であれば、4cmなんてすぐに超えてしまうでしょう。
なんか「大会期間中、体型を変化させない選手権」みたいな違う競技になりそうですね。
まとめ
今回は「スキージャンプでスーツ規定違反の失格はなぜ?測り方やどこが問題か調査」と題してお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。
スキージャンプという競技は、スキージャンプの測定方法、測り方やスーツ規定をよく読むと、体型とスーツとの関係で競技の結果が左右されるような、よほど繊細で緻密なスポーツなのだとは思いますが、これだけ失格者が出るということは根本的に何かが間違っているよう感じてしまいます。
北京オリンピックの時はもちろん今回も高梨沙羅選手の責任ではないと思いますが、一番ダメージを受けるのも選手自身ですので、1日も早くもっとルールが明瞭になり本質的な競技の技でスキージャンプを競い合えるようになってほしいです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
今回の記事は、こちらの情報を参考にしています。
http://saj-wp.appmlj.com/wp-content/uploads/【スキージャンプ】用品測定方法ガイドライン(2021年6月1-日更新版).pdf